さみしいきもち



「なにをしてるんだ、理樹」
 ひとり、部屋の床に座り込んで読書をしていたら突然扉が開いたから驚いた。入ってきたのは恭介だ。
「どうしたの? 野球の練習中じゃないの?」
 もう試合の予定なんてないのに、毎日放課後になるとみんなグラウンドに集まってくる。もちろん僕も。自然と足が向いてしまうのだ。
「理樹が来ないから。探しにきたんだ。……お前、鼻声っぽいな」
 いつものことだけど、よく気が付く人だなと思う。まだ一言しか喋ってないのに。
「うん、風邪ひいたかも。だから練習は休むって真人に言ったのに」
「そうか」
「……恭介?」
 恭介はグラウンドには戻らず、僕の隣に座り込む。
「ひとりだとつまんないだろ?」
「僕が本読んでるの見えてるよね」
「……」

 無視して読書を続ける、ふりをする。恭介は僕の気を引きたいのだろう。それくらいは分かる。
「ひとりだと寂しいだろ」
「それは恭介でしょ」
「へ?」
「僕がいなくて寂しいのは、恭介のほうでしょ」
 言い切ると恭介は固まった。実際、思考が停止しているんだと思う。恭介にこんなこと言うなんて自分でもびっくりしているくらいだ。悪戯心が湧いたのかもしれない。
「そう、か。そうかもな」
「……恭介ってさ」
 ほんと僕のこと好きだよね。
「なんだよ」
 と、言おうとしたけどやっぱりやめた。さすがに恥ずかしすぎる……。
「な、なんでもない」
「うわ。気になる。言え」
「あー……えっと、ありがとね。恭介」
「……なにがだ」

 恭介が来てくれてよかった。
 本当はひとりがつまらなかったし、ちょっとだけさみしかったのだ。